Fresh Hop Fest. 2018

ひろげよう!ホップの輪

今年収穫した国産ホップでつくったビールを楽しむお祭り

  • 9.1(Sat.)
  • 10.28(Sun.)

遠野の取り組みを見学してきました 【Fresh Hop Fest.2018 ホップ収穫体験 Tour report】

木暮 亮

木暮 亮

2018年8月27日(月)。Fresh Hop Fest.2018(以下、FHF2018)に参加するブルワリーや飲食店のみなさんと、岩手県遠野市にホップ事業の取り組みを見学してきました。

持続可能な生産体制を目指した新たな取り組み

まず、向かったのはホップ圃場。ここ遠野市は昭和38年から栽培を開始し、日本産ホップの生産を牽引してきた最大の産地です。しかし、その遠野市におけるホップ生産量も昭和62年の229,000kgをピークに生産者の高齢化などにより年々、減少傾向にあります(平成29年は43,604kg)。

圃場の様子。

この状況を打開すべく、2016年より行政、民間企業や生産者が連携した「Brewing Tono」プロジェクトをスタートさせています。

生産の現場では、キリン株式会社やホップ農家などによる農業法人「BEER EXPERIENCE株式会社(以下、BE社)」を2018年に立ち上げ、産地を守ること、持続可能な生産体制を築くことを目的に活動をはじめています。

BE社のスタッフ。社長の吉田氏(左)、副社長の浅井氏(中)、三浦氏(右)。

遠野市では雪解け後に土が乾きだした3月下旬から作業が始まり、6月中旬くらいまでに蔓を巻く作業を終え、8月下旬から9月上旬に収穫をするのが年間の流れです。

現在、遠野市ではレモン、グレープフルーツのような柑橘系の爽やかなアロマが特徴である「IBUKI」を中心に栽培しています。幸運にも見学した圃場では、「IBUKI」の他に「MURAKAMI SEVEN」、そして新品種の試験栽培を見ることができました。

新しい品種。

「収穫が少し遅めの品種です。そのため、収穫時期が分散することで、作業をしやすくなるメリットがあります。今年は1バッチだけになりますが、『SPRING VALLEY BREWERY(以下、SVB)東京』でビールをつくる予定です」と新品種の特徴を「SVB」でシニアマスターブリュワーを務める田山智弘氏が教えてくれました。

新品種について話をする田山シニアマスターブリュワー(左)。

見学した圃場は、10aで180kg(乾燥重量)の収穫量でしたが、圃場によっては、300kgを超える収穫量のところもあるといいます。浅井氏によると「収穫量を増やすためには、『土づくり』が重要で、たい肥を入れる量やタイミングが大切だと農家さんに口をそろえて言われます」。また、吉田氏は「基本的なことですが、適した時期に適した作業をすること。これを守れば収穫量は増えてくると思います」といいます。

新たな取り組みとしては、ドイツのホップ生産現場で取り入れられている機械化の推進です。

「ドイツでは、電柱の太さの支柱を立てることで全体の支柱の数を減らし、トラクターの横に摘み取り専用の機械を使って収穫しています。生産効率の向上を実現することで1人あたりの栽培面積を増やしていけます。この方法を取り入れたドイツでは、生産者は減少しているにもかかわらず、収穫量は増加しているのです。私はここに日本産のホップ生産を発展させるポイントがあると考えています」(浅井氏)。

現在は手作業で蔓を切り離している。生産効率を上げることもクリアしなくてはならない課題だといいます。

「BE社」では新たな栽培方法の実用化を実現し、ホップ栽培に関心をもつ人たちに伝えていくことで、日本産ホップ市場を活性化させたいと考えています。

収穫されたホップは劣化しやすいため、すぐに市内にある収穫センターへ運ばれます。

収穫期には、ホップを積んだトラクターが走っている。すれ違うとホップの香りがするそうだ。

摘花機で毬花を茎、葉から外した後、機械で取り除けなかったものを人の手で外します。その後、8時間かけて乾燥させ、最終的に毬花の水分量を9%の状態にして出荷。最盛期には、町の人が総出となり24時間体制で稼働しています。ホップがもつ香りや苦味を楽しめるのは、良質な状態で出荷している農家の努力がありました。

機械で処理できない部分は人の手で行う。とても地道な作業です。

さらにFHF2018で使われる遠野産冷凍ホップは、圃場の収穫から1時間で冷凍車へ運べるよう対応している話には驚きを隠せませんでした。

冷凍ホップに使うライン。この後すぐに冷凍車で工場に運ばれていきます。

遠野では、34軒の農家が収穫、加工をローテーションで担当。協力して取り組んでいます。

FHF2018では、農家のみなさんへ感謝して飲みたいと思います。

生産者と手を取り合ったビールづくりを目指して

ビールの醸造現場では、「遠野麦酒ZUMONA(以下、ZUMONA)」と今年5月に販売を開始した「遠野醸造」を見学させてもらいました。

「ZUMONA」のゴールデンピルスナー。

「ホップの里」として有名な遠野ですが、これからは町全体が大きなブルワリーのようになり、さらなる美味しいビール、新しい文化を創造するため「ビールの里」として進化しようとしています。これを実現するため、「本気のブリュワーと本気のホップ農家が毎日顔を合わせる空間を設け、未来のビアカルチャーを語り合う場をつくりたい」という思いからBE社のオフィスは、「ZUMONA」内に設けられています。同じ場所で行動を共にすることにより、お互いに「今、どんなことをしているか」が明確になり、情報共有しやすくなったといいます。

「ZUMONA」内にあるBE社のオフィスの模様。

一方、「遠野醸造」も醸造家・生産者・地域住民が一体となってオープンなビールづくりをすることで、新しいビール文化を育てていくことを目指しているブルワリーです。

「遠野醸造」のラインナップ。

遠野地域では、「ZUMONA」が1999年より県内のクラフトビールを牽引してきました。そこに「遠野醸造」が新たな風を起こしています。飲食店を備えている「遠野醸造」では、地元の方とのコミュニケーションの場となっている他、ブルワリーを立ち上げていく経過を公開して「誰でも参加できる仕組みにしています」(袴田氏)。最近では県内の離れた地域や仙台といった他県からのお客さんも来店するようになり、自分たちがしていることを知ってもらう場としての役割も果たしています。

「ビールの里」と呼ばれるようになる日を目指し、2つのブルワリーがどんな化学反応を起こすのか? 楽しみでなりません。

今後は「ビールが、より身近な存在になるようなアプローチをしたい」(袴田氏)と市民向けのビール講座や地元事業者と『Made in Tono』のビールづくりを構想しています。

「遠野は盆地という土地柄、面積は広いのですが、まとまった土地を確保することがとても難しいです。これまで1.8haと3.1haの畑を確保することができました。しかし、3.1haの畑には10人を超える地権者様がいらっしゃいます。ホップを栽培する圃場として使用確認をする必要があり、これからお1人ずつお話をしていかなければなりません。農家さんも生活があり、年間で作物を収穫する必要があるため、ホップのみで運営されている方は遠野にはおりません。他の作物にかける時間によって、ホップに割ける時間も各農家さんで異なってきます」(BE社浅井氏)。

これからの日本産ホップの生産にとって、遠野の取り組みにかかる期待は大きい。

今回のツアーを通じて、ホップ事業に関わるみなさんがワクワクしながらお話ししている姿がとても輝いてみえました。

半世紀の間、日本のホップ事業をリードしてきた遠野は、未来に向けて「持続可能な生産体制の実現」にむけて動きはじめています。

木暮 亮

木暮 亮

『日本にも美味しいビールがたくさんある!』をモットーに応援活動を行っている。実際に現地へ足を運び、ビールの味だけではなく、ブルワーのビールへの想いを聴き、伝えている。飲んだ日本のビールは1500種類以上。また、ビールイベントにてブルワリーのサポート活動にも積極的に参加し、ジャーナリストの立場以外からもビール業界を応援している。

日本ビアジャーナリスト協会ホームページにて、「ブルワリーレポート」、「うちの逸品いかがですか?」、「Beerに惹かれたものたち」、「ビール誕生秘話」、「飲める!買える!酒屋さんを巡って」などを連載中。

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