今年収穫した日本産ホップでつくったビールを楽しむお祭り

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イシノマキ・ファームは農福連携で4年目のホップ栽培

コウゴアヤコ

ビアジャーナリスト/ライター コウゴアヤコ

宮城県北東部にある石巻市では、2017年からホップの栽培が始まっています。
圃場を管理しているのは、高橋由佳さんが代表を務める「一般社団法人イシノマキ・ファーム」。
「農を通して地域、社会、そして自然とつながる」をコンセプトに、多くの地域住民を巻き込み、人びとが地域で循環できる仕組みとしてホップや野菜を育てています。

2019年収穫体験会

4年目のホップ栽培がスタート

今年もホップ栽培の季節を前にした3月10日、山梨県北杜市の「ホップ農家小林」の小林吉倫さんを講師に迎え、東北マイクロホップ農家のみなさんとともにホップ栽培の講習会を行いました。

ホップ講習会

普段感じている疑問についてディスカッションをしたり、株ごしらえの作業を実際に実演していただいたり。
限られた時間ではありましたが、シーズン本格スタートに充実の学びの時間を得ることができました。

ホップ講習会

3月18日には、若者を対象にした個別相談、就学、就労等の進路決定をサポートする「ユースサポートカレッジ石巻NOTE」の訓練生と、共生地域創造財団のメンバーが圃場に来訪。
株開き作業のための下準備として、除草作業や堆肥ならしなどの作業を共に行いました。

世代や立場を超えてみんなでする農作業は、純粋に楽しく、なんとなく孤独な気持ちで作業している時とは違い、心強い気持ちになります。

白浜ホップファームでの作業(3月18日

4月初めに株開きを行ったホップたちは、5月に入り心地よい日光の下でグングンと蔓と根を伸ばしています。
新たに株分けしたものも発芽がちらほら。4年目の株はだいぶ太い芽もでてきて、誘引作業に追われています。

「夏にはホップのグリーンカーテンが広がる畑でみなさんをお迎えできるように、他地域のホップ農家のみなさんと教え、教えられ、情報を共有しながら国産ホップの可能性を少しずつでも高めていきたいと思います」と、スタッフの加納実久さん。

例年、収穫されたホップは「いわて蔵ビール」で知られる世嬉の一酒造に運ばれ、オリジナルビール「巻風エール」を醸造しています。

さらに昨年から、“ホップを楽しむ製品ラインナップの拡大”と、“イシノマキホップのブランド化”を目指し、ホップ塩などビール以外の製品開発に取り組んでいます。

オリジナルビール「巻風エール」

農業と福祉が連携。幸福も育てるホップ栽培

イシノマキ・ファームは、国産ホップ栽培への新しい取り組みに、ソーシャルファーム(農福連携)というコンセプトを取り入れ、農業を通して地域や社会と繋がり、社会的に弱い人もそうでない人も対等に過ごせる場所づくりを目指しています。

そのひとつが、農業体験や勉強会を通しての就労支援。
地域にある耕作放棄地を借りて、野菜の栽培、ホップ栽培体験のイベントを実施したり、古民家を改修したVillage AOYAという宿を運営しファームステイを希望する人たちの拠点づくりをしたり。
東日本大震災で大きく被災した石巻で新しい産業を育成するとともに、人材やコミュニティも育てているのです。

一般社団法人イシノマキ・ファーム代表の高橋由佳さん

「太陽の下で自然の営みに対峙する農作業は苦労も多いのですが、土に触れ、体を動かし、人とかかわりを持つことで、心が晴れ晴れとします。そんな農業体験を経て、石巻への移住を決める若者も出始めているんですよ」と、代表の高橋さん。

自然や土に触れることでリフレッシュし、元気を取り戻す姿に農業、地域の力、さらにはホップの力を感じます。
農業を通して地域、社会、そして自然とつながれるイシノマキ・ファームのホップ栽培を、これからも応援していきます。

Village AOYAでの味噌づくり体験会(2月)

DATA

一般社団法人イシノマキ・ファーム
住所:宮城県石巻市北上町
栽培面積:約4000m2
栽培品種:3種類(カスケード、センテニアル、マグナム)
URL: https://www.ishinomaki-farm.com/

【古戸沢(ふるとざわ)ホップファーム】
テレビ朝日の番組『人生の楽園』でも取りあげられた、自然豊かなホップファーム。
大きな石が沢山転がり畑には向かない土地であったが、開墾から支柱立てまで、全て自分たちの手で行った。

【白浜ホップファーム】
ビールをお供えするという全国的にも珍しい鹿嶋神社、通称「ビール神社」に近い立地にある。神社にあやかり、ホップを植えることになった。

☆写真はすべて一般社団法人イシノマキ・ファーム様からご提供いただきました

コウゴアヤコ
ビアジャーナリスト/ライター

1978年東京生まれ。杏林大学保健学部卒業。看護師を経て、旅するビアジャーナリストに転身。旅とビールを組み合わせた「旅ール(タビール)」をライフワークに世界各国の醸造所や酒場を旅する。ドイツビールに惚れこみ1年半ドイツで生活したことも。海外生活情報誌「ドイツニュースダイジェスト」や、雑誌「ビール王国」(ワイン王国)、雑誌「an・an」(マガジンハウス)、「クラフトビールの図鑑」(マイナビ)などさまざまなメディアで活躍中。