今年収穫した日本産ホップでつくったビールを楽しむお祭り

202091(火)1130(月)

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国産ホップの未来へ。新品種育成や技術指導も行う山梨県の「小林ホップ農園」

山口紗佳

ライター 山口紗佳

「小林ホップ農園」は、八ヶ岳と南アルプスに囲まれた山梨県北杜市にある1.5ヘクタールの圃場でホップの栽培、加工、販売をしています。

信州大学農学部でバイオテクノロジーを専攻していた同園の小林吉倫さんは、国産ホップ第1号として1980年に品種登録されながらも、ホップ農家の離農により絶滅の危機に瀕していた「かいこがね(甲斐黄金)」の栽培を継承。土壌や肥料の分析、徹底した生産データ管理など、これまでほとんどノウハウがなかったホップの栽培技術に対して地道な科学的アプローチを重ねることよって安定栽培に繋げました。

2014年に試験栽培をはじめた小林ホップ農園は今年で6年目。
現在は約240株の「かいこがね」や主力の「信州早生」などの国産品種を含めて約20品種を栽培し、生ホールホップ、乾燥、ペレットに加工して出荷までを行っています。

土壌コントロールと機械導入で作業効率化へ

昨年の小林ホップ農園では、農繁期となる春を避けて前の年の秋に株ごしらえを行って越冬させたところ、土壌中の病害菌感染で「かいこがね」を含む国産品種が大きなダメージを受けてしまいました。しかし、原因究明と対策を試みたことによって、今年は秋ごしらえでも問題なく成長しているといいます。

▲「かいこがね」の特徴である黄色味を帯びた若葉(2020年5月27日撮影)

「肥料や薬剤の成分を調整したり、使う順序を見直したりと、こまめに土壌をチェックして病害のコントロールに気をつけていたこともあって、今年は今のところ順調に育っていますね」(小林氏)

さらに、土寄せを行う管理機械や液体肥料などを散布するスピードスプレーヤー(トップのサムネイル画像)を導入して、圃場での作業効率をUPしました。

▲重労働になる土寄せや畝立てがスピーディにできる農機械

これまで会社員として働きながら農業に取り組んでいた小林さん自身も、春に会社を退職し、ホップ栽培に専念できる状況になりました。栽培体制を整えることで、小林さんが掲げる「安定した品質維持と株当たりの収量の向上」を目指しています。
栽培は例年通りのスケジュールで、天高く豊かに茂ったホップは収穫期を待つばかり。今年も7月23日ごろから収穫を始める予定です。

そして小林さんがもう一つ、目標として掲げる「国産新品種」の増殖も順調です。

「ホップの花つきの状態や位置、枝ぶり、繁茂量や栽培しやすさなど、さまざま観点で3タイプの株を増殖していますが、最終的にはその中から優良品種を1種類選びます。収穫したら成分分析も行って、総合的なデータで判断します」(小林さん)

一般的に、植物の品種登録は出願から登録まで、種類別に数年間の審査期間を要します。
次世代も品質や形状を保っているかどうかなど、長い年月をかけて様子をみる必要があるため、ホップの場合は7年ほどかかりますが、現在で6年目。ゴールは間近です。今後は山梨県と相談し、北杜市内に圃場を増設して農地拡大も計画中だとか。

ビール醸造に十分な収量と育てやすさ、そして何よりも香りのオリジナリティ。
日本独自のビアスタイルに欠かせない、日本生まれ、北杜市産の新品種に期待が寄せられています。

ホップ栽培アドバイザーとしての技術指導も

近年は東北地方のみならず、国内各地におけるホップ栽培の拡大にともない、栽培方法や就農相談の依頼を受けることもしばしば。培ったホップの栽培技術を定期的に全国の農家やビール醸造家、技術研究者と共有するなど、小林さんはホップ栽培のアドバイザーとしても頼られる存在です。農園から株分けしたホップの圃場視察や栽培セミナーなどを通じて、栽培技術指導にも積極的に取り組んでいます。

「今年は新型コロナの影響もあって去年に比べて現地に出向くことは少ないですが、全国から相談は寄せられています。今年は山梨県内にも4人のホップ農家が誕生したんですよ」

と、うれしそうに話してくれました。
ブルワリー設立の夢をもつ人や、酒屋や飲食店の新たなチャレンジなど、新規就農者のバックグラウンドはさまざまですが、共通するのは「ビール好きであること」。ベースとなるその想いが、手間のかかるホップ栽培には何よりも大事な素養なのかもしれません。

そんな新人農家への継続的なフォローも、小林さんのライフワークのひとつ。
九州に旅立ったホップは元気だろうか? あの病斑はその後どうなったのか? ホップ栽培をしてみたいと言っていたあの人は?
――株分けしたホップの成長やホップ農家について気にかける様子は、まるで巣立つわが子を心配する親のよう。
そんな深い愛情を、常日頃からたっぷり注がれた小林ホップ農園のホップです。

▲小林ホップ農園で栽培する品種の25%を占める「信州早生」(2020年5月29日撮影)

収穫したホップで造るフレッシュホップビールは、山梨県内をはじめとした各地のブルワリーで提供される予定です。ブルワーが口を揃えて「小林さんのホップは本当に香りがよくて質がいい」と、絶賛する小林さんのホップ。これから各ブルワリーの色をのせて、おいしいビールに姿を変えます。

小林さんの手から誕生する新種ホップのお披露目とともに、今年のフレッシュホップビールも楽しみにに!

※小林ホップ農園については過去の記事もご参考にしてください。
■フレッシュホップフェスト2019

【山梨】「Japanese Beer Style」の礎に。絶滅寸前の「かいこがね」を復活させた小林ホップ農園が、ついに北杜市産新種ホップの開発に成功!

 

■フレッシュホップフェスト2018

“種を継ぐ人” 日本在来種発祥の地で未来をつむぐ【小林ホップ農園】

 

※写真提供:小林ホップ農園

DATA

法人名:小林ホップ農園
所在地:山梨県北杜市高根町上黒沢字東久保1524外
管理者:小林吉倫
栽培面積:1.5ヘクタール
栽培品種:カイコガネ、カスケード、チヌーク、ハラタウ、ザーツ、センテニアル、ニューポート、信州早生、ソラチエース、スターリング、ナゲット他(約20種類)
栽培年数:6年目
HPhttp://hokutohops.com/
購入方法:外販可能(HPよりお問い合わせください)

山口紗佳
ライター

1982年愛知県出身、知多半島在住。中央大学法学部卒業。
名古屋で結婚情報誌制作に携わった後、東京の編集プロダクションで企業広報、教育文化、グルメ、健康美容、アニメなど多媒体の編集制作を経て静岡で10年間フリーの編集ライターとして活動。愛知拠点に東海のビール事情をお伝えします。

【制作実績】
フリーペーパー『静岡クラフトビアマップ県Ver.』、書籍『世界が憧れる日本酒78』(CCCメディアハウス)、雑誌『ビール王国』(ワイン王国)、グルメ情報サイト『メシ通』(リクルート)
【メディア出演】
静岡朝日テレビ「とびっきり!しずおか」
静岡FMラジオ局k-mix「おひるま協同組合」
UTYテレビ山梨「UTYスペシャル ビールは山梨から始まった!?」
静岡新聞「県内地ビール 地図で配信」「こちら女性編集室(こち女)」