Fresh Hop Fest. 2018

ひろげよう!ホップの輪

今年収穫した国産ホップでつくったビールを楽しむお祭り

  • 9.1(Sat.)
  • 10.28(Sun.)

「空」と「地」から変える。リモートセンシングを活用した「ホップジャパン」の栽培革命

山口紗佳

ライター 山口紗佳

さて、これはどこから撮影したホップ畑だろうか?

近くにある建物の2階から?
脚立の上から?
あるいは昇降リフト?

答えは、「空」だ。

高さ7mにもなる支柱を優に超える高さから撮影したのはドローン。
福島県田村市大越町にある「わせがわホップファーム」では、慶応義塾大学SFC研究所による支援協力により、ドローンを活用した栽培品質管理に取り組んでいる。近年、ドローンを活用したリモートセンシング(空間情報観測システム)がさまざまな産業で導入、応用されているが、高齢化による慢性的な人材不足を抱える農業分野においてもその効果が期待されている。

▲2018年2月撮影。慶應義塾大学SFC研究所・ドローン社会共創コンソーシアムによるホップ圃場の試験飛行

高さ10mまで生長するホップを特殊な赤外線カメラとセンサーを搭載したドローンが上空から撮影。葉色や毬花の生育状況を正確に把握することで、病害虫の予防や収穫適期判断に役立てることができる。現在は試験的な段階だが、得られた空撮データを集約し、AI解析することで、エリアごとの栽培ムラを把握してスポット的な施肥や農薬散布が可能になる。これまで肉眼では叶わなかった細やかな栽培管理により、効果的に生産性をあげることができる。さらに、従来は人の勘や経験値に頼らざるを得なかった栽培ノウハウをデータベースで可視化することで、将来の担い手に事業を継承しやすくなる。
ドローン活用による農業のリモートセンシングは、大きな期待を寄せられている最先端の試みだ。

▲ホップジャパンと協同でホップ栽培に携わる「わせがわホップファーム」の管理者、鈴木喜治さんご夫妻

普及すれば、ホップ栽培のハードルのひとつである属人的な作業負荷は確実に減るだろう。
ほかにも「わせがわホップファーム」では、収穫時にホップのつるを地上に下して摘み取り作業を行うためのウインチ式設備を導入している。ハンドルでワイヤーを下げて手もとで収穫できるので、従来の高所作業に比べたら格段に安全で、生育状況に合わせた複数回の作業が高齢者や女性でも容易にできる。

地元の設備会社の協力を得て開発したウインチ式設備

こうして福島県田村市で3軒のホップ農家と協力し、設備面からも栽培環境改善に努めてきたのが「株式会社ホップジャパン」の代表、本間誠氏だ。

 

農商工連携で6次産業まで、「ホップ」で循環するまちづくり

「日本のブルワーに日本のフレッシュホップを」

2018年1月の取材時、こう話していた本間氏が掲げるのは、ホップを中心とした地域循環都市。
ホップの省力化栽培と品質向上、ホップの自由売買を目的とした取引システムの開発(1次産業)から、田村市で育てた生ホップを使った「都路ブルワリー」の設立(2次産業)。そして地元の観光資源を活用したイベント開催や地産品とコラボしたオリジナリティのあるビール造りによる集客(3次産業)、さらに、廃棄ビールやホップ、麦芽カスを原料とした再生エネルギー開発まで包括したビジネスモデル、地元経済やエネルギーが「ホップ」で循環する壮大な「まちづくり」を目指している。
※参照:2018年2月5日付のビアジャーナリスト協会記事

【福島】日本の醸造家に日本のホップを! 田村市産のホップでジャパニーズスタイル確立へ。地域循環型クラフトビール事業が進行中


実現には、年々縮小するホップ農地の拡大が必須だ。
ホップ栽培の省力化は新規就農者を呼び込み、持続可能な産業、さらには本間氏が描くまちづくりにつながる。

田村市の各ホップ農家は省力設備を導入しながら、山形や岩手のホップ農家と技術交流を図り、着実に収穫量を増やしてきた。こうした地道な努力が実を結び、今年はどの圃場も順調な生育具合を見せているという。本間氏に現在の圃場の課題を聞いてみたところ、こう答えてくれた。

「うーん、収穫時の人手不足がちょっと心配ですね」

▲収穫時期を迎えたホップ圃場

当初は身内で予定していた収穫作業だが、予想を上回りそうな収穫量に急遽収穫イベントを企画。収穫だけではなく、簡易ビアインフューザーを通したフレッシュホップのビールも楽しめる充実した内容だ(詳細は記事末尾)

 

始動に向けて歩みを進める「都路ブルワリー」

緑豊かな阿武隈高原の中央に予定されている「都路ブルワリー」は、ヘッドブルワー齋藤健吾氏のもとで設備レイアウトの詰めの段階に入っている。都路ブルワリーでは「オープンファーメンター」(開放型発酵槽)と呼ばれる上蓋のないステンレス発酵タンクと杉製の発酵槽を導入し、杉材の発酵槽では野生酵母を使った自然発酵のサワーエールや木樽熟成も行う予定だ。
オープンファーメンターは、通常の密閉型と比べて、酵母に圧力がかからない状態で発酵するため、酵母がより自然に近い環境で本来の能力を発揮できる。さらに発酵状態を目で見て確認できるため、コンディションの良い酵母を回収して育てることができるというメリットもある。酵母がストレスなく活動できるということは、当然酵母から生成される香りにも影響を与えることになる。

ヘッドブルワー齋藤氏
「オープンファーメンターを導入している『富士桜高原麦酒』さんに勉強に伺ったところ、酵母の働きがすばらしくて。直接見て感じた香りも抜群に良いので、都路ブルワリーでも採用することにしました。杉の発酵槽でのビールづくりはチャレンジな面もありますが、おそらく国内では初めてだと思います」

一方、オープン型は雑菌混入などによる汚染リスクもあるが、醸造ルームには当初からオープンファーメンター専用のクリーンルームを備えている。都路ブルワリーでは、ホップと酵母の力を最大限発揮できる醸造環境を整えていく予定だ。

来春には、地元田村市で育った国産ホップを使うクラフトブルワリーが誕生する。

▲ホップジャパンと協同して栽培に携わる「新田ファーム」の管理者、新田浩さんご夫妻

ホップとビールを中心としたまちづくりは、田村市のホップ農家はもとより、地域活性化を願う地元住民や自治体のバックアップを得ながら、一歩一歩着実に実現に向かっている。
時間をかけて課題を解決し、フェーズごとに形にしてきたのだ。
ホップジャパンの構想は、決して夢物語では終わらない。

 

田村市ホップ収穫イベント

8月5(日)ホップ収穫体験ツアー開催
9:00      JR郡山駅西口ステージ集合
10:00~12:30 ホップ収獲体験
13:30~16:00  「アニマルフォレストうつしの森」で牧場フェス
(収穫したホップを使ったビア・インフューザービールと牧場イベントを楽しみます)
16:40      JR船引駅解散(16:53発 郡山行き)

会費:3,000円
※集合・解散場所からの送迎、収穫体験(ホップパック詰めお土産つき)、牧場イベント参加費、クラフトビール2杯つき

▲簡易ビア・インフューザーを使ってフレッシュなホップの香りが楽しめる

ホップジャパンのホップ生産データ

所在地:福島県田村市内3箇所
管理者:鈴木喜治、新田浩、山口栄
栽培面積:3農家合計で約1ヘクタール
栽培品種:カスケード、センテニアル、ナゲット、スターリング、かいこがね、CTZ(コロンバス、トマホーク、ゼウス)、クリスタル、マウント・フッド、ウィラメット
栽培年数:1年目が1軒、2年目が2軒
予想収量:2年目の圃場60アールで300㎏程度

山口紗佳

ライター 山口紗佳

1982年愛知県出身静岡県西部在住。中央大学法学部法律学科卒業。
名古屋で結婚情報誌の制作に携わった後、東京の編集プロダクションで企業広報、教育文化、グルメ、健康美容、ライフスタイル、アニメなど多媒体の制作経験を経て静岡県でフリーの物書きに。休日はグラウラーを積んでオートバイでツーリング。猛禽と赤も好き。
実績:『世界が憧れる日本酒78』(CCCメディアハウス)、『東京カレンダー』(東京カレンダー)、『ビール王国』(ワイン王国)、グルメ情報サイト『メシ通』(リクルート)他

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