Fresh Hop Fest. 2018

ひろげよう!ホップの輪

今年収穫した国産ホップでつくったビールを楽しむお祭り

  • 9.1(Sat.)
  • 10.28(Sun.)

生ホップの特徴を学ぶ
ホップセミナー

2018年6月26日(金)@スプリングバレーブルワリー東京

2018年6月26日(金)、代官山のスプリングバレーブルワリー東京にて、「ホップセミナー」が開催されました。キリンビールが育種してきた「IBUKI」が今年から外販されるにあたり、凍結粉砕ホップの特徴と使用方法について、ブルワーとシェアしようというのが今回の目的。約15名のブルワーが集まりました。

今回のコンテンツは下記の通りです。

  • FHF実行委員会ご挨拶(日本ビアジャーナリスト協会代表 藤原ヒロユキ)
  • FHF全体概要説明
  • 第一部:凍結粉砕ホップの特徴について(キリン株式会社 村上敦司)
  • 第二部:凍結粉砕ホップの使用方法について(スプリングバレーブルワリー株式会社 田山智広、キリン株式会社 村上敦司)
  • 凍結粉砕ホップIBUKIの購入方法について
  • FHF実行委員会よりご連絡
  • 懇親会

凍結粉砕ホップの特徴について

まずは、キリン株式会社の村上敦司博士から、凍結粉砕ホップの特徴についての説明。15分ほどのプレゼンテーションでしたが、要旨を抜粋してご紹介しましょう。

通常であれば、ホップは収穫の後に乾燥工程を経ます。というのも、収穫したばかりのホップは水分が多く、そのままだと腐ってしまうため、60度の熱風で7時間から8時間乾燥させるのです。その後、粉砕してペレットになります。

一方で、凍結粉砕ホップは乾燥工程を経ません。乾燥させるのではなく凍結させます。村上博士の例えを借りると、フレッシュなぶどうと干しぶどうの違い。フレッシュなぶどうは新鮮な香りがありみずみずしいのですが、干しぶどうは甘くておいしいもののみずみずしさや生の香りはありません。ペレットと凍結粉砕ホップでもそれくらい違うということです。

では、具体的に何が違うのでしょうか。

ホップの代表的な香り成分で、沈丁花やグレープフルーツのような香りのリナロールという成分があります。ホップを乾燥させるとリナロールが飛んでしまいます。

また、逆に凍結粉砕ホップにはなく、乾燥させると増えてくる成分もあるそうです。それが、枯れ草や藁を連想させるハスキーな香り成分。リナロールが酸化して別の香りになってしまうのです。

このように、主に香り成分の違いが顕著ですが、実際に使用する際の手間にも影響してきます。生ホップは水分が多いため、ベタベタするほど粘度が高くなり、ホップ投入の機械化が難しい。実際に「一番搾りとれたてホップ生ビール」はすべて人の手でホップを投入しているとのことでした。

そして、キリンビールが開発したディップホップ製法についても説明がありました。というのも、これが凍結粉砕ホップの特徴を生かせる製法だからです。

形の上では、ホップ投入のタイミングを主発酵の直前にずらしただけですが、これだけで香気成分がまったく変わってきます。

具体的には、リナロールがドライホッピングとほぼ同等でありながら、松ヤニのような香り成分ミルセンは格段に減ります。つまり、ドライホッピング並の香り強度があるにもかかわらず、よりクセのないビールを造ることができるのです。

また、レイトホッピングでは苦味もついてしまいますが、ディップホップとドライホップは苦味がつきません。

このように、第一部では凍結粉砕ホップの特徴とその新鮮な香りを生かせる新たな香気付与技術としてディップホップ製法を紹介しました。そして、第二部では実際にどう香りが異なるのか、ホップ投入タイミングを変えたビールで飲み比べます。

凍結粉砕ホップの使用方法について

第二部では、スプリングバレーブルワリー株式会社マスターブリュワーの田山智広氏と村上博士による、凍結粉砕ホップの使用方法についてのプレゼンテーション&テイスティングです。

今回はホップ投入タイミングを変えた5種類のビールを用意し、テイスティングでその違いを比べてみます。ベースとなるビールは2017年の「フレッシュホップ 藤原ヒロユキスペシャル」。やや濃色のIPAスタイルで、苦味に負けないよう甘味も付けたビールです。

すべてのビールを下記の条件で揃えています。

  • 原材料は麦芽、小麦、デキストリン、カラメル、乳糖。酵母はエール酵母、ホップはすべてIBUKIを使用。
  • 糖化はインフュージョン法。
  • α酸を200ppmとなるよう原単位を設定(⑤のみ400ppm)。凍結粉砕ホップのほうが水分を多く含むためホップの総量は多くなる。

そして、醸造の際に下記5種類の方法でホップ投入し、ホップ投入条件による差を比べます。

  • ①ペレット×レイトホッピングでワールプールの液温80度
  • ②凍結粉砕ホップ×レイトホッピングでワールプールの液温80度
  • ③凍結粉砕ホップ×ディップホッピング
  • ④凍結粉砕ホップ×ドライホッピング
  • ⑤凍結粉砕ホップ×ディップホッピング&ドライホッピング

なお、ホップセミナーではもっと細かい醸造条件や分析値まで公開し、それを見ながらテイスティングしたのですが、ここでは詳細を省きます。

テイスティング前には、田山氏から分析値から得られた結果について解説がありました。いくつか簡単に紹介しましょう。

凍結粉砕ホップではBUになりにくい

ペレットに加工する際にルプリンが潰れたり、熱がかかったりすることで、反応が進みやすくなっているのかもしれない。凍結粉砕ホップは水で守られているのか、異性化しにくい。

ディップホップ、ドライホップではBUが上がらない

熱がかかっていないため、BUが上がらない。なお、BUは苦味の数値だが、イソα酸以外にも数値に影響を与えるものがあるため、BUが高いから苦いというわけではない。また濃色麦芽でもBUが高くなり、ホップ以外からも影響を受ける。

α酸以外にも苦味や渋味に影響するものがある

③(ディップホップ)と④(ドライホップ)のBUは大きく変わらないが、それ以外の影響があって感じ方が異なる。ドライホップはα酸以外の成分があるので、BUは上がらないが苦く感じる。

では、いよいよテイスティングです。

まずは①と②の比較から。こちらはレイトホップ80度で条件を揃えているため、ペレットと凍結粉砕ホップの違いがわかる比較です。

藤原ヒロユキ氏によると「生のほうがみずみずしくてきれいにスッと入ってくる」というイメージ。

田山氏は「生のほうが草っぽい、葉のような香り。草餅のような生ならではの香り」とのことでした。

私もテイスティングしてみましたが、香りが明らかに違います。ペレットではないだけでここまで違うのか……というレベルでした。レイトホップだけでも凍結粉砕ホップの特徴は十分感じられるということですね。

続いては、②③④の比較です。

この3種類はすべて凍結粉砕ホップを使っていて、②レイトホップ、③ディップホップ、④ドライホップという違い。つまり、ホップ投入のタイミングの違いがどう味に影響するのかという比較です。

田山氏は「④が最もクセがあり、個性を強く感じる。紅茶や烏龍茶、草餅・よもぎのような草っぽさがある。それに比べると、③は洗練されていて苦味も質がいい。ただ、香りは突出していない。むしろ②のほうが出ている印象」という見立て。

IBUKIは個性が強いホップではありませんが、穏やかなりに上品な香りを付けてくれるホップ。そのIBUKIの特徴、凍結粉砕ホップの特徴が出ている比較です。

なお、⑤ディップホップ&ドライホップは、複合されてかなりホップが添加されたもの。比較というよりも、この方法ではこれだけホップの印象が強くなるという事例でした。

では、参加者の方々の感想を抜粋して紹介しましょう。

  • ディップホップをするとまとまりが出る。ドライホップは紅茶っぽい感じ。ペレットだとエグみが感じられる。
  • ①と②ではこれだけ違いがあるのかと思った。③は洗練されてまとまった感じ。④はホップありのまま、個性を楽しめる。⑤はバランスが崩れた印象。メロンの甘さのような感じが際立った。
  • ペレットでも凍結粉砕ホップはさわやかさが感じられた。ディップホップは鮮烈なフレッシュ感があり飲みやすい。ドライホップはさわやかさよりも紅茶のような香りがある。
  • ①と②ですごく違いが感じられた。凍結生ホップの特徴が出ている。ドライホップは松ヤニのような感じ。

藤原氏は「①と②はペレットと凍結粉砕ホップの違いがよくわかる。②のほうが素直に体に香りが入っていく。ドライホップは五角形か六角形のようなゴツゴツした感じがある。それがディップホップだと三十六角形。丸ではないが、粗い感じが洗練された印象」という感想。

といったように、凍結粉砕ホップの特徴とディップホップの特徴がしっかりと理解できるテイスティングとなりました。

そして、最後に別の3種類のビールを比較しました。藤原ヒロユキスペシャルを参考に造ったSVB3周年ビールをベースにしています。

  • 1-1 液色を淡色にしたもの
  • 2-1 ペレットでディップホップしたもの
  • 2-2 ルプリンパウダーでディップホップしたもの

この比較では、
・ベースが淡色になるとホップの印象も変わるということ
・ルプリンパウダーを使うと味のキャラクターも変わる
ということがわかります。

特に、苦味についてはイソα酸以外にもさまざまな成分が関連してきますが、ルプリンパウダーを使うと他の成分の影響が減ります。つまり、ホップの香りも強化され、ディップホップすることで苦味も少なくなってくるのです。

参加者の皆さんの感想を聞いていると、凍結粉砕ホップの特徴がよくわかるテイスティングだったのではないでしょうか。今後、ホップ収穫の時期を迎え、各ブルワリーがフレッシュホップをどのように使ってビールを造るのか、今から楽しみです。

凍結粉砕ホップIBUKIの購入方法について

ホップセミナーの最後には、凍結粉砕ホップIBUKIの購入方法について説明がありました。購入の流れは下記のようになります。

  1. 「製品規格書」をご覧いただき、凍結粉砕ホップについてご理解ください。
  2. 「確認書」について同意いただければ、日付と署名を直筆で記入。
  3. 「国産ホップ発注書」に必要事項を入力(「2018年産 凍結粉砕ホップ IBUKI」は1袋4kg単位)。
  4. 7月27日(金)までに提出(お届け日の変更も7月27日まで)。
  5. 9月3日~9月20日のご指定の日付にお届け(収穫が天候調整になった場合は、9月中旬以降のお届けとなります)。

詳細につきましては、ibuki@freshhop.jpまでご連絡ください。

富江弘幸

ビアライター 富江弘幸

1975年、東京都生まれ。法政大学社会学部卒業後、出版社でライター・編集者として雑誌・書籍の制作に携わる。その後、中国留学、制作会社勤務を経て、現在は英字新聞社で勤務しつつ、ビアライターとして活動中。ビアジャーナリストアカデミーの講師も勤める。著書『BEER CALENDAR』(ワイン王国)

執筆・監修:ビール王国』(ワイン王国)、『ビール大全』(楽工社)、『るるぶキッチンmagazine 秋冬号』(JTBパブリッシング)、「あなたのしらない、おいしいビール」(cakes)、他多数。

Twitter:hiroyukitomie
Website: http://www.hiroyukitomie.me/